つくば と 水戸 で表千家のお茶の教室を運営する 楽知会(主宰 石光宗眞)のブログです。 初心者にも、上級者にもご満足いただける本格的な茶道教室を目指しています。 楽知会が取り組む お茶のお稽古や、お茶事関係の情報を掲載していきます。
露地とは
茶事における露地は、日常の喧騒から非日常の世界に お客様を誘う結界の役割を果たします。
その露地を如何に整えるか・・・これは 亭主の大きな関心事です。 また、お客様には 日常の汚れをはらい 清浄な地に向かう通過点であると心得て 通っていただけたら幸いです。
ところがところが、社中の皆さんが露地を渡る姿を見ていると、飛び石から足を踏み外すことを恐れてか 視線は常に足元。
足早に歩みを進めて蹲踞に行き着くや 素早く手と口を清めて これまたサッサと足早に茶室へと向かっていきます。
はてさて この通い方は正解か・・・?
露地の準備
さて、露地はどのように整えるのでしょう。今年の稽古茶事(朝茶)に向けての準備をご紹介します。
茶事の前、一番の大仕事は茶室内外の掃除です。 中でも露地の掃除は、雨が降っても、日照りが続いても、雪が降っても、風が吹いても、瞬時に景色が一変してしまいますから、どの時点で何をするべきか もっとも気を使うところです。
今夏は蜘蛛の巣との戦いでした。
我が家は恰好の住みかなのでしょうか、毎年梅雨明けが近くなると 柘植の生垣に蜘蛛がいくつもの宿営地を築きます。 お世辞にも見栄えが良いとはいえませんので、茶事3日前には殺虫剤を散布して、蜘蛛には黄泉の国に旅立ってもらいました。
その後 幾つもの巣を箒で払い落として痕跡を消し去ったことは申すまでもありません。
前日は 夕刻5時頃から露地の隅々まで1時間余りをかけて水撒きをしました。しっかりと露が打たれた露地は 通っていて とても清々しく感じられるものですが、 夏は打てども打てども すぐに蒸発し、さらに具合の悪いことに 瞬く間に全体が白く干からびてしまいます。 したがって、前日の夕刻にどの程度の水を撒いておくかが、翌朝の露地の姿を決定づけることになるのです。
三露
茶事では、お客様の席入、中立、退出に備えて、三度水を打って露地を清めます。 これを三露といいます。
席入り前の水打ちは、お客様が寄付きに集い白湯を召し上がっているころ、中立前は お菓子を召し上がっている頃、そして退出前は 道具の拝見をなさっている頃を見計らっています。
苔が輝き、木の葉に露が宿り、灯篭や庭石までもが黒く艶やかに光る露地にお客様を誘うことが出来たら、その日の水撒きは成功と申せましょう。
今年の朝茶は、スタッフの人数が極端に少ないなか 席入り前の水撒きは、袴を身に着ける直前の亭主が行いました。 盛夏に涼を呼ぶ水撒きは、飛び石や地面に水を打つばかりでなく、ホースを上に向けて木々の葉にも露が残るような撒き方を心がけます。 草木が濡れて輝き、キラキラ光る無数の玉の雫を溜めていたことに お気づきでしたでしょうか。
(簡単そうな水撒きですが、季節に応じて その方法は変えています。 例えば酷寒のころならば 凍結してお客様の足元が滑ることがないような配慮をしますし、飛び石にたまった水は雑巾で拭き取るといったこともいたします)
露地の渡り方
日常の汚れを落として 非日常の世界へ移行するための露地を 亭主がこのように準備を重ねていると知ったお客様なら、 ただ足早に通り過ぎればよい場所ではないと感じ取っていただけると思います。 ゆっくり一歩一歩踏みしめながら 何を心に留め、どのように気持ちを整えて茶室に向かえばよいのか、もう一度考えてみて下さい。
但し、連客は正客のことを第一に考えて、お待たせしないこと、暑さ寒さの厳しい折は 外気が茶室内に流れ込むことにも考慮して 躙り口が開いている時間を最小限にとどめるなどの配慮も求められます。 ササッと動きながらも 見るべき物は見、心に留めおく物は留める・・・これぞ連客の極意
以前あった本当の話
晴天のある日 茶事が終わって露地に降り立ったお客様が
「わーッ! 雨 降ったのー? 気付かなかったわねェー!」
送り出しに向かった私の耳に届いたこの声に 思わずニーッと苦笑いを禁じ得なかったことがあります。
うちの社中の方々に限って まさかそんなことはないと思いますが、ユメユメ そのような無神経な大声を発することがないように!!!
最後の最後に亭主の力が抜けて フラフラしてしまいますから。
露地は やっぱり難しい
稽古茶事とはいえ、今夏もこのような準備をしたのは事実です。
でも、自然相手の準備ほど難しいものはありません。
お客様の席入り後、手水鉢の水を足しに行った私の目に飛び込んだものは、アセビに薄く張られた蜘蛛の巣と 蹲踞近くの木々に発生したスス病。
気を付けていても 終始監視していることは出来ませんから 防ぎきれるものではありません。スタッフの人数が少ない時は尚更です。
加えて、若いころなら いち早く発見できた小さな変化に、目が弱くなった今の私は気付けないのかもしれません。だって、陽が傾きだしてから整えた前日の露地では スス病に全く気付きませんでしたし、茶事当日、朝日を受けた繊細な蜘蛛の糸も ほんのチョッピリ角度を変えた位置から見るだけで姿を消してしまい、 そこには汚れのない清浄な地が広がっていたのですから。
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